学校英語の第9回目は、バイリンガル教育に詳しいトロント大名誉教授、
中島 和子(なかじま かずこ)さんのコメントです。

「いいのか学校英語」というコラムが朝日新聞に全10回掲載されました。子どものうちからの英語学習方法を、いろんな人から学ぶための内容です。とてもよい内容だったので要点をまとめてお伝えしたいと思います。





<今回の語り手の名前と職業>
バイリンガル教育を国策でかかげるカナダに住んで通算50年、
子育てもカナダで行ってきたトロント大名誉教授
中島 和子さん(なかじま かずこ・73歳)


カナダでは国全体で英語とフランス語の両方を習得するべく、“イマージョン教育”という外国語教育を行っています。

<カナダ式 イマージョン教育とは?>
「算数や理科といった主要教科を外国語を使っておしえます。例えば浮力について教えようと思ったら、水にうかべた物体をみせながら、説明はすべて外国語でする。子どもは言葉がわからなくても、先生の動作や表情を手がかりに、浮力がなんであるか学んでいく。その過程で外国語を自然とみにつけるというわけです。」

<カナダ式イマージョン教育のながれとは>
「幼稚園の後半からはじまります。最初は子どもに外国語(=フランス語)を話すことを強要せず、先生だけが外国語ですべての授業をおこなう。慣れてきたら子どもも徐々に外国語で話すように指導します。

会話と読み書きの基礎ができたところで、例えば小学校の中学年では7割、高学年では5割と外国語の割合をへらしていく。

高校では特定の教科をのぞいて学習言語を母国語(=英語)にもどしますが、この計画的な接触量の調整によって、母国語を犠牲にせずに、両方とも自由にあやつれるようにするのが狙いです。」

<日本ではバイリンガル教育の弊害が問題になっているが>
「同時にやると、両方とも中途半端になるとの懸念もきかれますが、40年余の歴史をもつカナダでは、相乗効果でかえって母国語の能力がたかまるという傾向が確認されています。」

「言語の習得には時間がかかるうえ、使わなくなるとすぐに忘れてしまうという難点があります。だから英語教育は幼児期からはじめるだけではなく、大学まで一貫したカリキュラムにもとづいておこなうことが肝心です。」

<日本の英語教育現場について>
「小中、中高などの一貫校で、英語に熱心な学校もふえていますが、卒業後も学び続ける場がなければ社会にでるまでに力がおとろえてしまいます。
また、個々の学校まかせでは全体の底上げにもつながりません。国が抜本的な教育改革をしなければ、本当に英語のできる人材は育ちませんよ。」

(2010年9月1日(日)の朝日新聞コラム“いいのか学生英語”から一部抜粋しました)




今回の英語学習方法のまとめ (by 管理人)

今回はカナダが国全体でとりくんでいる「イマージョン教育」についてのお話でした。(カナダでは母国語=英語、外国語=フランス語、です)

一番ナルホド!と感じたのは、幼児期にしっかり外国語教育をしておき、小学高学年になってから母国語の割合をふやしていく、というところです。

これまでの日本の英語教育とはまったく逆ですよね。
(2010年度までの日本の英語学習の割合→幼稚園、小学校=ゼロ。 中学校からスタート。 高校から本格的に。)
“外国語教育40年”のカナダだからこその、長年の研究結果にそって決められた、ノウハウの詰まったカリキュラムだといえるでしょう。

外国語に拒否感のない幼児期にはじめておくことは外国語の耳をやしないます。小学高学年になってから、母国語での割合をふやすことで、これまで足りなかった文法の知識や表現力をカバーできますね。

すごくよい方法だと思いますが、インタビュアーの中島さんがおっしゃっている通り「カナダ国全体でやっているからこそ成果がでる」わけです。
もし日本の私立学校だけでやるとすれば、それこそ幼稚園~大学までカバーしているかなり大きなコミュニティ学園である必要があるでしょう。途中で転入・転校してしまっては意味がありません(転校先で母国語の授業についていけなくなる可能性アリ)

日本ではまだまだ小学校での必修化がやっと、というのが現実ですね。足りない部分は家庭や英会話スクールで補うしかないかと思います。

■カナダの事情補足■
カナダでは憲法で1982年に英語とフランス語の両方が「国の公用語」として認められている。国民の 59.7%が英語、 23.2%がフランス語を母国語としている。
(2011年3月28日現在の情報です。出典:Wikipedia)